恐ろしい思い出
次の日も父ちゃんは、学校から帰ってきて店の準備を手伝っていました。マージャン台の布を張り替えていると、
「死神くーん」
オオワダ君の声がしました。
父ちゃんは急いで玄関を開けると、
「やろうよ」
にっこりしたオオワダ君は、今日も将棋を指しに来たのです。
父ちゃんも嬉しかったので昨日と同じ場所で、早速将棋を始めました。一時間くらいしてやめたんだけど、結果は父ちゃんの三勝0敗でした。そのあとなんとなく気づいたんだけど、魚の焼けるいいにおいがしてきて、二人のお腹が同時に「ぐ~」っと鳴って、また大笑いしちゃいました。
オオワダ君は帰ると言ったんだけど、父ちゃんはなんだかもうちょっとオオワダ君と一緒に居たくて、オオワダ君を無理やり晩御飯に誘って、家族と一緒に食べることになりました。
お父さんが、
「オオワダ君はずいぶん背が高いねー」と、感心したように言うので、父ちゃんはちょっと、ズキっとしたけど、父ちゃんの背が低いのは、小さいころから言われ慣れているので、平気でした。
「オオワダ君のお父さんやお母さんが、心配するといけないから電話をしておきなね」と
父ちゃんのお父さんが言ったので、オオワダ君は家に電話をしました。
晩御飯の仕度ができて、みんなでお膳を囲んで、
「いただきまーす」と言ったとたん、カツガツムシャムシャ。父ちゃんと、父ちゃんの兄ちゃん姉ちゃん弟の俊ちゃんは夢中で食べだしました。
それにつられたのか、はじめは遠慮してたオオワダ君もガツガツムシャムシャ。
お父さんのオヤジギャグなんか聞いちゃいません。
でも、すごく楽しくて、すごくおいしくて、ものすごくいっぱい食べちゃいました。ふと、お父さんを見ると、なんだかニコニコしてました。
食休みをして、オオワダ君がこれから帰るって電話して、父ちゃんは、オオワダ君と、もうちょっと一緒にいたかったので、途中まで送って行くことにしました。
外に出るともう暗くなっていて、等々力緑地の空には星が輝いていました。
オオワダ君と並んで、なるべくゆっくりペダルをこいで、こんどはオオワダ君家に遊びに行く約束をしました。
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つづく
投稿日 2007/06/09 Feel something | リンク用URL | コメント (0) | トラックバック (0)