2008/04/04
ひと筋の放物線
深い夢だった。
もう少し奥へ入っていったらもう元へは、朝は来なかっただろうと思うくらいギリギリまで深い眠りだった。
にもかかわらず夢を見た。レム睡眠て本当なのかいお医者さん。
小さな川の土手の下にたたずんでいた。
頭のすぐ横に細い木の橋が架かっている。
土手には青々と雑草が茂っていて、いつまでも止まらない流れをただ見つめていた。澄んだ水、川面は輝いて一瞬も同じ表情をとどめない。
どれくらい見つめていたのだろう、ふと気づくといつの間にか橋の上に誰か立っている。
その誰かの向こう側から太陽が優しい光を放っている。その誰かはシルエットとして俺の目に映っている。
多分男の人だろうと思う。大柄だったし、そのうしろ姿の両腕が股を押さえているように見えていた。
優しい光から切り取られたそのシルエットを、またしばらく見上げていた。
水の流れる音、微かな風のささやき、今まで経験したことのない、感じたことのない空気に包まれていた。
シルエットの角度が少し変わり、その股から何かが放物線を描いて川に注いでいるように見えた。
その放物線はまた角度を変えて、やがて俺に向かって注がれた。
俺はただ、ただその空気に身を委ねていた。とても神聖な感じだった。
「もしかしたら人ではなく・・・」
夢の中の言葉は声にはならない。
太陽が角度を変えた。
うっすらとその誰かの頬が光の輪郭を帯びた。新月の翌日のお月さま。
「一番大切なもの、一番の宝物」を悲しませているのはおまえ自身だ。風がささやいた気がした。
放射線状のなにかも金色に染まっていた。
驕りも恐怖感もない。俺の目から暖かく透明な液体がとめどなく流れていた。
黄金色にそまった放物線は、頭(こうべ)を垂れた稲穂だった。
優しい輪郭のその誰かの顔が、僅かに微笑んだように見えた。
スローモーションで放物線を描くブーメランのような浮上感。目を覚ますとカーテンの隙間から、ひと筋のスポットライトが差し込んでいた。
投稿日 2008/04/04 Feel something | リンク用URL | コメント (0) | トラックバック (0)
JAZZが好きで聴いている。この強烈なジャケットデザインが夢に顕れたらしいことを、最近見返した映画「Mo’ Better Blues」で思い出した。逆光のシルエットは当時の私の脳味噌に今風に言えば刺さったということだろうか。ユングやフロイトはどういう診断をくだすのだろうか。